【レビュー】『「ハコヅメ」仕事論』を読めば漫画がより面白くなる!

 「「ハコヅメ」仕事論」と銘打って日経BPから出版されているビジネス書。 この本は、漫画家・泰三子さんの紹介や、「ハコヅメ」に出てくる人物達へのこだわり、伏線の張り方について紹介されています。 本書を読めば、漫画「ハコヅメ」が更に面白くなる!

目次

単行本:「ハコヅメ」仕事論

基本情報

  • 作品名:「ハコヅメ」仕事論 女性警察官が週刊連載マンガ家になって成功した理由
  • 作者:泰 三子、山中 浩之
  • ジャンル:ビジネス、ヒューマンドラマ
  • 発表時期:2022/3/22発行

マンガ「ハコヅメ」とは

 交番勤務の女子の先輩後輩の身も蓋もない職場実録と、下ネタが魅力の週刊モーニング連載の漫画。 周到に巡らされた伏線も秀逸で、読み返すと「あっ、今やっているこの話に、こんな前からもう伏線のネタがしこまれているぞ」とびっくりします。

あらすじ

 泰さんのめちゃくちゃ面白い話を、ビジネス書という形でまとめられている。 「ご本人の発言の雰囲気を生かしたかった」ためインタビュー形式になっています。目次は、

第1章 警察官からマンガ家へ異世界転生

第2章 警察という”会社”で生き残る上司とは

第3章 マンガ家泰三子、驚異の妄想力

第4章 女子の働き方、友情、成長

 第1章は、作者の泰三子さんがどのような経緯を経て、漫画家へ転生したか興味深い内容になっています。 でも本書で一番面白いのは、「第3章」です。

「ハコヅメ」を今よりもっと楽しめる知識

 第3章では、「ハコヅメ」に周到に張り巡らされた伏線、作者・泰さんのバックボーン、そして「ハコヅメ」の描き方が紹介されています。 この内容を知ったうえで、「ハコヅメ」を読めば、今よりもっと楽しめます。 私が面白いと思った内容を紹介します。

周到に張り巡らされた伏線

伏線を仕掛け始めた時期

 連載が軌道になり始めた4巻から伏線を仕込み始めたそうです。

「ハコヅメ」4巻から伏線を仕込み始めた 

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p162

伏線についての考え方

 泰さんは、伏線のことを「リスク回避」と考えています。 警察で10年間過ごされた社会人らしい発想で、漫画を描かれています。

あまり「伏線、張っていますよ」というのは言いたくないんですけど、でも社会人のひとりとしてリスク回避の方法はある程度、取っていますというレベルです(笑)

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p184

これを描いておくことで、後から、「ここのときから考えていましたよ」って演出できるな、というリスク回避です。

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p184

伏線の例

 「くの一」の町内会の会長さんの話は、やっぱり「伏線」だったのかと、納得です。

 一方、8巻で『西川さんの「胃が痛い毎日だ」』というセリフが、アンボックスに向けた伏線だったということを、読んで初めて知りました。 言われてみれば納得、凄い伏線です。

存在だけ4巻で明らかにして10巻で登場した女性警官もそうですし、「くの一」でも町内会の会長さんとか、8巻の時点(「かぐや姫とくノ一」)で、カナの扱いに悩む西川(庄司)警部補に「胃が痛い」って言わせているでしょう。 8巻で西川さんの「胃が痛い毎日だ」ってセリフを入れるときに、はるか10巻以上先の『別章 アンボックス』にでてくる西川さんの”オチ”をすでに考えていたんですか。

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p185

伏線をはれるマンガの作り方

 漫画に出てくる時点だけでなく、キャラクターの超細かい履歴書を考えて、しかも4,5年先の展開まで頭の中で描いたうえで、描いている。 だから、深遠な伏線もはれると納得です。

最初、「ハコヅメ」の連載を始める時に、実は、今連載している「ハコヅメ」の4~5年先の状況を描くつもりで話を作っていたんです。 

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p162

話の流れというよりも、キャラクターについて考えているんです。ほら、警察って身上調書、取るじゃないですか。

(田淵)逮捕されると取られるやつですよね。交友範囲とか、生活の様子とかがわかる、超細かい履歴書

その身上調書レベルを頭の中で取ってから、キャラクターを出しています。自分の中でその人の人生を考えておかないと、じゃべらせられないので。

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p187

ナコン君
ナコン君

超細かい履歴書とか、4,5年先の展開とか、

凄い構想力に脱帽!

泰 三子さんについて

 泰さんが面白い漫画を描けるバックボーンについて、記載されていますので紹介します。

子ども時代

 幼稚園時代から、「妄想で話をつくる癖」があったそうです。自称「変態」だそうです。

子どもの頃、幼稚園時代からの妄想で話をつくる癖があって、自分の作った話を兄弟にずっとしてきたんですけど、高校時代くらいから「自分の頭が休まらないのが苦しい」と感じるようになって

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p188

警察官時代

 警察官は、性器についても普通の会話と同じテンションで話せるそうです。 漫画で描かれて警察官の下世話な会話も「オブラートに包んでいる」そうです。 だいぶ変わった職場で10年間働かれたようです。

元同僚の女性とこの前会ったときにも、性器を内蔵の一部と同じぐらいのカテゴリーとして、普通の会話と同じテンションや声量で話をしていて

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p208

(編Y)「ハコヅメ」の警察官の会話、全然これ、面白おかしく演出しているわけじゃないんですね。

オブラートに包んでいる状態です(笑)。けっこう周りから「何でもっとちゃんと描かないの?」「どうしてあんなソフトな描写なの?」と言われるんですが、いや、商業誌だからだよ、と。

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p208

「ハコヅメ」の描き方

ぞわっと感じるシーンを作る

 「ハコヅメ」は、読んでいて笑いの中にときどき「ぞわっと」感じる。 子ども向けの「アンパンマン」みたいに精神が安定しきっている物語には無い、大人も惹きつける魅力だと思っています。

 この「ぞわっ」は、作者が意図的に描いているそうです。 改めて漫画家さんは深く考えて描かれていると感心しました。

男女間のことを描くときはちょっと気持ち悪くするようにしている。

如月にしろ、源にしろ、ちょっとそういう雰囲気が出るときに「圧」とか「怖さ」とか、ちょっとぞわっとするように描くことで、読者が「男社会で生きる20歳の女の子の視点」で作品をみてほしいなと思っています。

主人公にとってこの作品の舞台は、どこかずっと緊張感がある場所なんだというのは、しっかり読者にかんじていてほしいと思うんです。

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p215

自分の弱さとか不利益なこととどうやって折り合いをつけながら、仕事と私生活を両立していくかを悩む人を描きたい。 なので、今のところは、主人公にそういう恋愛関係のエピソードを絡ませるときは、読者にぞわぞわを感じてもらえるような演出で描いています。

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p217

キャラクターについて

 登場人物達への愛情はないそうですが、「山田」は守られているそうです。 

「ハコヅメ」は、最初から今まで、ずっと山田を守るような仕組みで描いていて。山田が嫌われないように読者を誘導しようと。自分の大事なメッセージは、大事に大事に守っている山田に、肝心な時に言わせるという手法

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p296

一つのキャラに愛情をかけ過ぎると、物語の公平性が崩れてしまってバランスが悪くなるので、キャラクターへの愛情はない。

それぞれのキャラクターのプラスマイナスがゼロになるような計算でキャラを動かしたい。

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p222

ナコン君
ナコン君

確かに、「山田」は突っ込み役とか良いこと言う役のみで、

汚れ役はやっていない気がする

結末について

 如月と川合の関係は進展するのか、源と聖子ちゃんの関係は腐れ縁のままなのか。 泰さんはすでに登場人物たちのハッピーエンドの結末を持っているそうです。

「ハコヅメ」は、それぞれの登場人物が望んだ形ではなくても、私なりにそれぞれのパッピーエンドと思える結末は用意しているつもりなので、それはもう安心していただいて大丈夫です。

引用元:「ハコヅメ」仕事論 p227

ナコン君
ナコン君

川合は幸せな大人になっているかな?

気になります

「ハコヅメ」を楽しむために

 まだ読んでいなければ、是非読んでください。 思わず声をあげて笑っちゃいます。 

 期間限定ですが、ebooksで3巻まで無料で閲覧可能できます。 無料で読んで、面白ければ続きを購入かレンタルするのが良いと思います。

 

まとめ

 やっぱ、「ハコヅメ」は面白い、電車の中で読んでいても思わず声を出して笑ってしまう。 そんな面白い漫画の魅力の一つである伏線や、描いた人のバックボーンなどがわかる『「ハコヅメ」仕事論』。 

 日経ビジネスの取材を受けて、描かれたシーンもあります。 ビジネス書としては、物足りませんが、「ハコヅメ」魅力解説本としては秀逸。 是非読んでください、「ハコヅメ」がもっと面白くなりますよ!

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この記事を書いた人

ワイの名前は「ナコン君」、
趣味は、貯金と貯筋のアラフィフのヘビ
・小遣い投資でレバナス・SOXL投資中。CWEBが含み損
・筋トレは毎日自宅で、シックスパックを目指し中
通勤途中に漫画を愛読、キングダム・ジャイキリ・カイジetc

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